株式価値/企業価値の評価(相続・贈与・M&A)

2018年03月02日

株式価値や企業価値の評価方法は、相続・贈与の場合とM&Aの場合で取り得る評価手法が一般的には異なります。

1.相続税・贈与税評価における株式評価手法

国税当局が発表している「財産評価基本通達」においては、取引相場のある株式については、その市場価格で、取引相場のない株式については、大会社は、類似業種比準方式または純資産価額方式、中会社は、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式または純資産価額方式、小会社は、純資産価額方式または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式、で評価します。

<会社の規模判定>

従業員数が70人以上の会社は全て大会社となり、従業員数が70人未満の場合には、①従業員数に応じた総資産価額基準、②取引高基準、のいずれか大きい方となります。

業種
総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
及び従業員数

区分
卸売業
20億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
大会社
7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)
中会社
7,000万円未満又は従業員数が5人以下
小会社
小売・サービス業
15億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
大会社
4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)
中会社
4,000万円未満又は従業員数が5人以下
小会社
卸売業、
小売・サービス業以外
15億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。)
大会社
5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。)
中会社
5,000万円未満又は従業員数が5人以下
小会社
業種直前期末以前1年間における取引金額区分
卸売業30億円以上大会社
2億円以上30億円未満中会社
2億円未満小会社
小売・サービス業20億円以上大会社
6,000万円以上20億円未満中会社
6,000万円未満小会社
卸売業、
小売・サービス業以外
15億円以上大会社
8,000万円以上15億円未満中会社
8,000万円未満小会社

2.M&A等における株式評価手法

企業が株式買収や事業譲渡等(M&A)を実施する際の評価手法は、相続や贈与における国税当局が発表している「財産評価基本通達」のようなものはありません。つまり、対象となる会社や事業の状況等を総合的に勘案してその時の適切な評価手法が採用されるのです。
評価手法は大きく、①インカムアプローチ、②マーケットアプローチ、③コストアプローチ、の3手法が一般的です。

①インカムアプローチ

インカムアプローチで代表的な評価手法はDCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法といわれるものになります。
DCF法とは将来生成されるキャッシュフローを現在価値に割引き、現在の企業価値や株式価値を算定する方法です。DCF法も直接株式価値を算定する方法やいったん企業価値を算定した上で、有利子負債等を加減算し株式価値を算定する方法、等その方法も様々です。また、DCF法以外のインカムアプローチとしては、配当還元法やEVA法といわれる手法も代表的です。
インカムアプローチは他のアプローチに比較し、条件が整えば最も優れた評価手法ではあるのですが、将来キャッシュフローや割引率の算定等を主観性を完全に排除して行うことは難しいため、実務上、この手法のみで評価の妥当性を説明するのは難しいと考えられています。

②マーケットアプローチ

マーケットアプローチには、類似会社(公開会社)方式と類似取引方式の2つが代表的です。
類似会社方式は、公開している類似会社の株価と財務情報の倍率を対象会社に適用して評価額を算定する方法で、類似取引方式とは、類似会社のM&Aの際に支払った価格と財務情報の倍率を対象会社に適用して評価額を算定する方法です。いずれも倍率を用いて評価する手法から「マルチプル法」と呼ばれたりもします。この倍率も税引後利益を使うPER、EBITDA(減価償却費及び支払利息控除前税引前利益)を用いるEBITDA法や売上高倍率法、あるいは純資産を使った純資産倍率(PBR)等様々です。
マーケットアプローチは実際の取引価格に基づいた価格がゆえに他のアプローチに比較し最も客観性が確保された点で優れていますが、対象会社と類似する会社選定で主観性を完全に排除することは難しいアプローチです。

③コストアプローチ

コストアプローチには簿価純資産価額法と時価純資産価額法に分類されます。
簿価純資産価額法は会計上の簿価を用いて評価するものですが、通常、会計上の簿価と時価とは乖離していることが多いため、そのまま採用されることはありません。
他方、時価純資産価額法は全ての資産負債を時価評価し価額を評価するのですが、特に貸借対照表に計上されていない全ての無形資産を識別し評価するのは実務上困難なため、通常は有形資産を時価修正してそこから負債等を控除して株式評価を行います。
このように一部簿価をそのまま採用することから修正簿価純資産価額法ともいわれています。

上記の通り、各アプローチとも長所と短所それぞれあることから、実務上は上記アプローチを併用して、価格の妥当性を検証するのが一般的です。
実際には対象会社の財務情報や事業環境等の理解、類似会社の状況等、広範な調査分析が必要となるので、通常は専門家への事前相談や価格の妥当性を検証してもらうことが多いです。

事業承継/M&Aの相談事例

2019年01月11日 07時45分(I.Wさんの相談)

M&Aの株式評価でDCF(ディスカウンテドキャッシュフロー)法を用いた場合にリスクフリーレートの算定が必要になるかと思いますが、一般的には国債の利回りを使うと聞きます。国債の利回りといっても様々ですが、どの期間が妥当でしょうか。

2件の書き込み/ 1名の士業・コンサルタントが回答
2019年01月10日 12時10分(I.Wさんの相談)

M&Aの株式評価の際に算出するNet Debt(ネットデット)は通常の借入金に将来の退職金支払い債務(退職給付引当金)を加算し、そこから現金預金を差し引けばいいのでしょうか。

2件の書き込み/ 1名の士業・コンサルタントが回答
ベストアンサーがあります
2019年01月10日 07時14分(I.Wさんの相談)

お世話様です。とある会社の買収を検討しています。対象会社は中小企業で、監査法人の監査も受けていません。開示された資料等を拝見すると退職金規定(従業員が対象)がありました。特に貸借対照表に退職給付引当金は計上されていないのですが、どのように評価すればいいのでしょうか。

4件の書き込み/ 1名の士業・コンサルタントが回答
ベストアンサーがあります
2018年12月28日 08時39分(匿名を希望さんの相談)

立て続けの質問で申し訳ございません。もう一点ご教示ください。
現在複数社のスポンサー候補に声がけ期間中であることは先の質問の通りなのですが、これから予定されているスポンサー候補先からの株価提案について社内でその妥当性の協議が提案の後に行われる予定です。必要調達額は決まっていますので、株価との見合いで議決権比率の問題にもかかわる問題と理解しております。当社は非上場会社ですので株式市場での株価...

1件の書き込み/ 1名の士業・コンサルタントが回答
ベストアンサーがあります
2018年12月27日 14時27分(匿名を希望さんの相談)

現在、資金調達に向け複数社のスポンサー候補に声がけ中です。今後のステップは、法的拘束力のない意向表明をスポンサー候補から受領し、その中から数社について本格的なDDフェーズに移って頂く予定です。他方で、現在、事業上の重要契約を取引先と締結することで動きをかけていますが、調印日がちょうどDD期間にかかりそうです。DD期間中でも取引先と重要契約を締結しても問題ないものでしょうか。

2件の書き込み/ 1名の士業・コンサルタントが回答
ベストアンサーがあります

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経営コンサルタント
24年余メガバンクに勤務、税理士業務も出来る経営コンサルタントです。
24年間のメガバンク勤務と5年間の事業会社への経営再建出向の経験をベースに、会計・税務といった税理士業務に関わらず幅広く中小企業経営のサポートを行っ...